目黒区行革計画(素案)に対する意見書
目黒区行革計画(素案)に対する意見書
2008年11月28日
日本共産党目黒区議団
政府が進めてきた「構造改革」が、格差の拡大や社会保障制度の改悪、住民サービスの切捨てをすすめ、住民は、くらしへの不安と政府への怒りをひろげています。とりわけ毎年行ってきた社会保障予算の自然増2200億円の削減により、「医療崩壊」「介護難民」「年金空洞化」などくらしを支えるはずの社会保障が生活を壊し、不安を生み出しています。年金改悪、後期高齢者制度の導入、定率減税の廃止や高齢者増税などの負担増と給付のカットが、くらしを疲弊させています。加えて政府は、アメリカ発の経済危機を口実とした大企業の大量解雇や銀行の貸し渋り・貸しはがしを野放しにする一方で社会保障の財源を口実とした消費税増税を狙うなど、経済悪化の付けをさらに国民犠牲で進めようとしています。
このような中、区内では、自営業者や非正規雇用の若者、高齢者など経済悪化の影響を受けている区民が多い国民健康保険では、加入者の2割が保険料を払いきれなくなっているなど深刻な事態です。また銀行の貸し渋りがひどくなる中、中小企業への「原材料価格高騰対策緊急保証」融資の拡大には、区内から相談・申請が殺到する状況です。高齢者は、年金課税の強化で雪だるまの負担増に加えて、この4月から後期高齢者医療制度の高い保険料で苦しんでいます。
今回の「行革計画(素案)」が、もっとも中心にすえなければならないのは、こうした景気悪化、各種負担増で苦しんでいる区民のくらしをささえる施策と財源をどう作るかということです。そのためにも「官から民へ」の民営化による公的責任の後退、「受益者負担」「負担の公平性」による区民負担増、福祉・教育などでの職員削減による住民サービス後退など国の言いなりになった「構造改革」路線の「行革」ではなく、憲法に基づく本来の「地方自治」の精神を全面的に貫いた行政改革を区民とともに進めることが重要です。特に、大企業の利益が優先する区政にメスを入れることは、大型開発優先の街づくりのムダを点検し、ここから新たな財源を作り出します。また、積立金を大開発やハコ物に使うのではなく、区民生活を支える財源に変えることができます。
日本共産党区議団は、今回の「行革計画(素案)」を、区民の目線から住民生活擁護を中心にすえなおし、大企業奉仕、開発優先になっている区政のムダを点検し、区民のくらし応援、福祉充実の区政へ転換するよう求めます。
以下、これまでの問題点と素案への具体的意見を述べます。
�\通擽萓�5年間の「行革」による区民への影響と問題点
2004年度からの5年間を集中改革期間とした青木区政の行革プランは、「厳しい財政状況」を理由にして、福祉・教育関係の施策と職員をバッサリ切り捨てました。
現金給付では、敬老記念品削減(1367万円)、心身障害者福祉手当の減額(4789万円)、非課税ひとり暮らしの高齢者福祉電話代助成廃止(3040万円)、就学援助の対象縮小(918万円)、生活保護世帯への見舞金の廃止(2625万円)など。くらしを支える制度でも、生業資金貸付の廃止(2500万円)、生活支援ヘルパー派遣の削減(1034万円)など次々切り捨てました。こうした制度の廃止・縮小が、広がる貧困と格差の影響を受けて厳しい生活を余儀なくされている区民に対して「追い討ち」をかけるような負担増に追い込みました。
また、この間の「行革」の大きな特徴の一つは、経費と職員削減最優先で指定管理者制度の導入と委託の拡大で民営化を推進したことです。高齢者や障害者福祉施設、保育園、体育館など91施設への指定管理制度の導入、学校給食調理の小中全校の委託などです。このため特養ホームの現場では、経費抑止のため低賃金の非常勤やアルバイトが増え、厳しい労働条件のなか職員の退職が続き、慢性的な人手不足になっています。この結果、入所している高齢者の生活の質にも影響がでています。
区は、こうした民営化をすすめ、この5年間に職員総数の10%を超える282人を削減したことを「主な成果」として挙げていますが、この多くが福祉や教育分野の現場職員であり、高齢者や子どもたちに犠牲を強いるものであり、区民への影響は重大です。
その一方で、中目黒駅前再開発、大橋再開発と周辺整備、定期借地方式でのJR跡地開発などを聖域扱いし、開発優先と大企業の儲けの便宜をはかる行財政運営のあり方にメスをいれる「行政改革」には一歩も足を出そうとしません。この結果、補助金は、計画当初55億円であった中目黒再開発が、現在77億円に膨れ上がるなど「再開発費」が右肩上がりで増加基調になっています。加えて起債残高の多くは、大半を区の独自財源投入で行った目黒線立体交差事業や都立大2期工事などの大型開発事業のものになっていますが、この点についての総括がありません。
また、現行の「行革プラン」では、5年間で191億円の財源が「不足する」という財政計画を立て、5年間で197億円を捻出しました。ところが、この5年間は、バブル期を超える史上最高の区税収入に加えて、法人住民税の増収などにより、財政計画と決算を比較すると、基幹財源である区税収入と特別区交付金を合わせた5年間の決算は、財政計画よりも400億円以上も増収になりました (図1)。
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| 図1 |
それにもかかわらず、区は計画の見直しもせず、そのまま区民に犠牲を押し付ける福祉の切り捨てを強行したことは問題です。
次に、職員削減計画の問題です。「行革計画(素案)」では、職員数の23区平均を無理やり出して比較し、目黒区より職員が少ない区を出して「目黒区の職員数が多い状況にあります」と区民に説明していますが、職員が少ない自治体の方が「活力ある組織」になり住民サービスが良くなる根拠などどこにもありません。
区は、この5年間で、国が求めた削減計画(総数の5%)をも超えて、265人(総数の10%)の目標に対して282人を削減しました。そのために学校給食、保育園、障害者施設、体育館など福祉、教育分野が次々と民営化されました。今後も、新たな3年間で140人を削減するために、地域保健福祉事務所の廃止、保育園・児童館・障害者施設・社会教育館の民営化などが続いています。こうした削減計画が「活力ある組織」をつくるどころか、職員の病休やメンタルヘルスの悪化も招いています。
今後、団塊の世代が大量退職し、給料の安い職員に一気に若返ることで、人件費も下がります。職員の削減を優先し、福祉・教育行政サービスを後退させ、公的責任を縮小させる無謀な職員削減計画は撤回するべきです。
現行の「行革」を総括するにあたって、きわめて重要な問題は住民参加です。
区がすすめた第2田道保育園の指定管理制度による民営化に対して、当時の保護者の9割が反対しました。しかし、区はこの「行革」計画に固執し、保護者との合意も反故にして一方的に強行しました。住民不在、区民の意見を無視して「行革」が進められました。
「行革計画(素案)」でも、 PDCAのサイクルで見直し検討を行うとしていますが、区民の参加で行うシステムがありません。行政改革についての情報の共有と住民参加による意思決定なしに真の行財政改革は、進みません。今回の「行革計画(素案)」の意見聴取も手続きの一環として機械的に行われていると言わざるをえません。これからの計画作成では、広く区民の意見とともに関係者や団体への意見を反映させること。また、計画ができた後も、区民の要望や意見に基づき計画変更することを求めます。
�⊃渓楾�区行革計画(素案)の目的と行動計画への意見
新たな行革計画を策定するにあたっては、この間の「行革」が区民生活にどのような影響を及ぼしているかを調査し反映させることが不可欠ですが、今回の「行革計画(素案)」には、この点がまったくありません。
このため、「行革計画(素案)」では、「社会の様々な面で格差が広がっており、社会保障制度への不安の拡大なども懸念されます。区は、区民生活の安定・向上を図らなければなりません」と、指摘しているのにもかかわらず、物価高騰や景気悪化、各種負担増で苦しんでいる区民のくらしや要求に基づき区民をどうささえるかの分析もなく、政策の重点が全く定まっていません。
そのため、新たな行政改革計画は、区民施策を進めるために必要な財源をどう生み出すかではなく、「経費の削減でいかに安上がりなサービスにするか」「受益者負担で収益を上げられるか」「政府の公務員削減の行革路線に合わせてどれだけ公務員を減らせるか」が自己目的になっています。
これでは、区民の大変なくらしをささえ「住民福祉の向上」を進める改革はできません。きちんとした分析と区民の暮らしを守る重点政策を明らかにした上での計画にすべきです。
また、素案で示されている区の財政分析は、客観的な区民への資料提供ではなく、財政困難を恣意的に区民に押し付けるものになっています。
区財政は、30年以上ずっと黒字続きです。自治体の財政が黒字かどうかの指標である実質収支は右肩上がりで黒字幅は増えています(図2)。
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| 図2 |
現在、区の基幹財源である特別区税と都区財政調整交付金は、バブル期を越えています(図3)。
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| 図3 |
借金返済の額である公債費比率が高く、区民一人あたりの借金残高が23区中23位ということを棒グラフ付きで強調していますが、この多くを占める減税補てん債や公園用地の借金は、国や特別区(財政調整交付金など)の財源で100%まかなえるため、3年後には下がります。(図4)。
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| 図4 |
また、積立基金残高は、2008年度末には、バブル期に近い額まで達します(図5)。
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| 図5 |
「行革計画(素案)」では、各種積立金の1つである財政調整基金の目標を、標準財政規模の15%に設定しました。直近の数字では、2007年度の標準財政規模は673億円であり、その15%にあたる100億円が目標です。2007年度の財政調整基金は47億円ですから、これから53億円も積み増しをすることになります。ちなみに、これまで15%を確保できた年が一度だけあります。それは、異常なバブル絶頂期の1991年でした(図6)。
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| 図6 |
これでは、景気悪化によってきびしい状況に置かれている区民の暮らしや福祉より、「行革計画」に基づく「基金積み増し」優先に陥る危険は目に見えています。15%という目標を区民生活を考えずに設定すべきではありません。
以上で示したように目黒区は財政面では、現在、安定した基盤を持っています。23区の平均が健全財政の指針であるかの様な記述や図表は、区民への客観的な財政状況の公開とはいえません。新聞でも、23区全体の積立基金の現在高は、バブル期を超え1兆円を突破したと、その異常さが報道されています。区民に財政難を恣意的に押し付けるような分析をやめ、客観的な財政分析をすべきです。
また、景気悪化で今後の経済動向が不明だからこそ、区民への犠牲の押し付けではなく開発など不要不急の事業の見直しを抜本的に行うことが必要です。
以上の観点から、行動計画について以下の見直しを求めます。
�(欅蕷燹∋�童館、多機能障害者施設、社会教育館への指定管理制度導入を止めること。
すでに目黒区では117施設で指定管理者制度が導入されていますが、さまざまな問題が噴出しています。その根本にあるのは、経費削減を優先する民営化です。日本共産党区議団は、導入による影響を抜本的に総括しなおすことを求めてきましたが、区はいまだに指定管理期間の延長でごまかそうとしています。まともな検討のないまま、これ以上指定管理者制度で導入を拡大すべきではありません。とりわけ、職員削減・経費削減のための民営化の手段として福祉分野に指定管理者制度を導入することは、区民の人権侵害や福祉に対する区の公的責任縮小につながるものであり、止めるべきです。
社会教育館は、区民の教育権を保障する立場からふさわしくありません。
児童館での民営化も指定管理制度を前提にしたもので行うべきではありません。
��各地域にある保健福祉サービス事務所の廃止と、新包括支援センターへの統合を凍結すること。
すでに住民、関係者から、地域福祉・介護が後退すると、反対や不安の声が多数上がっています。「賛成する区民もいる」などと、区民に区の計画を一方的に押し付ける態度を改め、来年4月から実施の計画を凍結すること。
住民、関係者と時間をかけて今後の地域福祉・介護の拠点としての地域保健福祉サービス事務所の機能をどうするのか検討を行うこと。地域福祉から区が撤退する委託は見直すこと。包括支援センターは、現在の5か所から10か所に増設すること。
��在宅支援センターへの補助金は存続させること。
現在、在宅支援センターは地域のなかで介護保険サービス提供や包括支援センターを補助する役割を果たしている。補助金のカットは、この在宅支援サンターの財政的保障を損ない、地域からの撤退を招くことになります。各センターからの合意も得られていません。止めるべきです。
�な欅蕷燹Τ惺撒訖�調理業務は直営で行うこと。
区内にはアレルギーを持つ乳幼児が多く、これに対応した目黒区の保育園給食は、全国でもアレルギー食の先駆的役割を果たしてきました。また今、問題になっている食の安全からも給食の質を守ることが大切であり、委託すべきではありません。
小学校での学校給食のこれ以上の委託は止めるべきです。これまで起きた事故や問題点を検討し、直営にもどすべきです.
�ハ型佑い海い隆浜�運営業務は正規職で行うこと。
各住区の老人いこいの家の管理は1人職場であり、準デイサービスなど多様な業務をこなしています。これを非正規にすれば、サービスの後退を招きます。非正規化は止めるべきです。
�Τ惺察κ欅蕷猴冖涯般海枠鷯鏘于修靴覆い海函�
学校・保育園での用務は、環境整備だけではなく、教師や職員などといっしょに子どもたちを見守る役割も果たしています。安易な非常勤化は、子どもたちの安全と成長に影響を及ぼすとともに、他の教師、職員への負担を増大し質の低下につながります。非常勤化は行わないこと。
��保育料の値上げはしないこと。
認証保育園や無認可保育室にかよう子どもたちの保育料への新たな支援策は日本共産党区議団が、求めてきたものであり歓迎しますが、「格差是正」「受益者負担」として認可保育園の保育料の改定(値上げ)は撤回すべきです。物価高騰と不安定雇用の拡大のなか、若年層の子育て世帯は経済的に大きな不安を抱えています。また、保育料の値上げは、女性が社会進出する上で大きな障害になります。保育料の値上げは、子育て支援、男女共同参画の観点から止めるべきです。
�╋荵楡濺�の使用料の改定について
「受益者負担」で行われてきた定期的値上げは、区民の自主的活動や住民自治を狭めるものになります。使用料の値上げは行わないこと。
��区有施設の改築・改修は区民の合意を重視し、安易な統廃合は行わないこと。
「平成19年からの10年間だけでも約430億円の改築・改修経費が必要」としていますが、費用の総額について、明確な根拠が不明です。国や都の補助金、特別交付金が使えるものもあり精査した計画的な額として算定すべきです。また、これまで日本共産党区議団が繰り返し指摘してきた大開発優先で、区民施設の計画的な改築・改修を行わなかったことへの総括・反省がありません。
あり方の見直しに際しては、区民の意見や要望を大切にした計画にすべきです。施設の統廃合による削減・抑制を前提にしないこと。
��区立中学校の統廃合は行わないこと。
規模の適正化は、競争教育の観点から、各学年3クラス以上でなければ活力ある学習活動ができないという考えにもとづいていますが、実践的には根拠が薄いものです。30人学級を実施すれば、クラスも教員も増やせます。学校統廃合は行わないこと。
��シンクタンクの創設は中止すること
23区でも、中野、世田谷、新宿などで自治体シンクタンクが作られていますが、一方全国では、廃止も相次いでいます。政策は、外部依存ではなく、基本的には、区の企画行政を充実されることが大切です。専門家の援助が必要な時は、今までのように課題別に対応できます。安易なシンクタンクの導入はやめるべきです。
��まちづくり開発費を聖域とせず、見直すこと。
今後、大きな財政負担になる中目黒再開発事業、JR跡地開発、大橋地区や駅周辺整備事業などによるまちづくり開発費を聖域とせず、見直すこと。
��IT化に伴う経費は、最低限必要な整備にとどめる見直しを行うこと。
IT化に伴う経費が巨大になってきています。今後のメンテナンスなどの費用を含め、今後の整備の計画と予算を明らかにして、最低限必要な整備にとどめる見直しを行うこと。
最後に、財政確保策として以下提案します。
�々颪鵬雜酳欷韻旅餮防蘆完�き上げを求めること。福祉や教育など地方分権にふさわしい財源移譲を国・都に求めること。
��大企業などへの応分の負担を求める立場から、道路占用料等の引き上げを引き続き行うこと。
以上